墨荘堂ブログ

【打鍼治験#1】呼吸時の背中の痛み

打鍼は打鍼中興の祖である、御薗意斎の学術ブレーンであった沢庵宗彭(安土桃山時代から江戸時代前期にかけての臨済宗の僧。大徳寺住持)が『刺鍼要致』に「病、頭にあるも、また腹において刺し、脚にあるもまた腹において刺す。一身の病、すべて腹において刺す。」と残しているように、腹部への刺鍼だけで、全身の症状に対応する日本独自の鍼術です。

とはいえ、腹部への刺鍼だけで治せるとしたらどんな原理なのか?ということを追求していた時にある先生のやり方に出会い、現在その先生と共に無分流打鍼を再構成しています。詳しくはこちら。これが発表できるようになるかどうか分かりませんが、臨床例は残しておこうと思います。

症状は息を吸うと、背中が痛む。そのために呼吸が浅い。鍼灸治療はしてもらっていたが、前述の症状だけが取れないという患者さんの症例です。

痛む前の状況を訪ねてみると、胃腸の状態が悪く、初診時も胃の張りや手足の冷えは訴えておられましたので、打鍼メインでいくことにしました。恐らく胃腸の位置を調整して、胸郭のスペースを広げるという打鍼の基本的パターンであろうと思われます。

腹診をすると、腹力は左が弱く左の天枢付近に細き筋があります。上部は肺先付近に強みがあるので、火曳きの鍼、負け曳きの鍼をした後、勝ち曳きの鍼で強みを調整しました。この時の刺激量は、槌の音と『針治書』の迎随の記載を参考にその場で決定していきます。

終了後尋ねると、「呼吸が楽にできるようになりました。背中も痛くないです。どうしても残って取れなかったのですけど。」ということでした。

2015-11-04 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

書痙の鍼灸治療

今回の患者さんは書痙(しょけい)を訴えて来院されました。

 書痙とは、字を書こうとする時、または字を書いている最中に、手が振え、または痛みが発生し、字を書くことが困難となる書字障害つまり、動作特異性で、上肢の局所性ジストニアです。

 症状は字を書こうとするときに手が振え、細い字を書こうとするとペンが止まってしまい力が入らないようで、もう一方の手で支えなければ字が書けなくなる状況で、手(特に大腸経)や肩の凝りはかなりありました。
 この方は緊張しやすい性格とは思いますが、特に大勢の人前で書く職業でもなく、病院に行くより先に来院されたので、小脳などを対象にした西洋医学的検査や診断はうけておりません。

治療
 全身の状態は心包・三焦システム、特に中焦の異常で、大腸経と頸肩の凝りが顕著にありました。そこで心包・三焦システムの調整と中睆に鍼をして、大腸経は董氏の倒馬鍼方、頸肩は皮膚刺絡をした後に上肢全体の筋・腱を調整しました。

 この後、字を書いてもらうと「あっ書けるようになりました。」とすらすらと書いていました。念のため小さい字も書いてもらいましたが、問題なく書けているようでした。その後も再発したという連絡はありません。

 ジストニアに関して鍼灸治療が有効であるという報告がありますが、私はまず鍼灸を選択してみるべきと思います。

 他の疾患でも書いていますが、一般的には人前で書く時に振える場合、神経内科などが担当科となり、消炎鎮痛剤ではない抗うつ剤系の薬物療法が最初から選択されることが多いです。この手の薬を飲んでから来院される方は本当に治りが悪いので困りますね。

 神経症の治療には半年以上の長い期間が必要なので、何ヶ月も服用してから鍼を選ぶのであれば、最初から鍼を選んでもらえば、この患者さんのように治療期間は短くて済むという訳です。ぜひご検討ください。

【症例2】

4〜5年前から字を書く時に手が震えるようになった。ホワイトボードは平気だが人が見ている前で書こうとすると、特にひどくなるという訴えでした。

パニック障害の治療によく使われる、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のランドセン(リボトリール)を処方されているけれども変化がないので、鍼灸を試してみたいとのこと。

 この方も全身の状態は心包・三焦システム、初回は上焦、その後中焦の異常で、打鍼で中焦のブロックを除去し、肺経、大腸経、三焦経の筋・腱を調整しました。さらに董氏の重子、重仙、中白、下白などのツボを使いました。

3回目で見られていなければ滑らかに書けるようになってきて、4回目で腕全体に力を入れず指だけで書けるようになったということで、治療を終了しました。ご参考までに字のサンプルを載せておきます。

書痙03

 

 

 

 

 

やはり薬を飲まれている方の場合は、治療期間が伸びてしまうようです。

2015-10-30 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

全頭脱毛の鍼灸治療

今回は最初に来院されたときの状態が、頭髪は全くない状態だった症例についてお話します。

2人とも頭部の皮膚も触ってみるとつるつるしていて、毛根も全く見当たらない状態でした。また、また頭だけでなく眉毛や体の他の部分にも毛がない状態でした。

伝統医学では、元々体のパーツと臓器の関係が設定されていて、古代中国医学の論文集である『素問』の六節臓象論篇には「腎の華は髪にあり」という記載があります。これは腎の持っているエネルギーの盛衰と頭髪の成長・脱落が関係していることを示唆しています。

伝統医学ではこのような考えをもとにどのように治療するかを決定していきます。また、「髪は血の余となす」ともいうため、蔵血機能を有している肝も同時に治療することにしました。

肝腎要というように元々肝と腎は密接な関係にあり、治療上でも肝と腎を整えて行くことは意味のあることなのです。

Aさんは2年前から円形脱毛が始まり、8ヶ月前より全脱毛になってしまったという経過です。そこで今回は肝兪、命門というツボにお灸をして、肝・腎のエネルギーを高めることにしました。

これだけでは少し足りないので、首・肩の凝りをとって頭部の循環を良くし、頭部と眉毛の部分を鑱鍼(ざんしん)で刺激することにしました。さらに肝兪、志室は自宅でお灸をしてもらうようにし、頭頂部の百会というツボにもお灸をしました。

鑱鍼というのは九鍼と呼ばれる昔から伝わる九種類の鍼の一つで、普通の鍼と違い刺さずに皮膚を擦るように使います。Aさんは2回目で髭と眉毛が出始め、体の冷えがとれてきたということで4回目には1mm程度の頭髪が全体に広がってきました。1mm程度になるとあとはどんどん戻ってきます。

Bさんは幼いときからアトピーがあり、2005年に悪化して漢方や鍼をしていましたが2008年に全頭脱毛になってしまったという経過の患者さんです。

この方は肝兪、命門の力が非常に弱く、治療開始から7回目まではあまり変化がありませんでした。そこで8回目から頭部の刺絡を加えたところ、9回目で初めて眉毛が生えてきてしばらくそのままの状態が続いていましたが、17回目で眉毛の部分が広がって右の頭頂部にも発毛がみられ、18回目で顔に産毛が出始め、1mm程度の頭髪も全体に広がってきました。部分的に残った場合は、その部分にだけ刺絡+知熱灸+鑱鍼という形で脱毛部の範囲を狭めます。

 AさんもBさんも出始めたのは眉毛からというのが印象的でした。Aさんの場合は鑱鍼で刺激していると、頭部全体がすぐに発赤してくるので反応がいいなと感じましたし、数回の治療で発毛してきたのもそのせいかと思われます。

2015-10-27 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

むちうち症の鍼灸治療

伝統医学では人間の体に十二本の経絡があって、そこに流れている気が循環していれば、病気にならないと古の人たちは考えていました。しかし様々な原因でその流れが堰き止められてしまうと、溝の中の泥のように止めているものを排除する必要が出てきます。

 そこで目的別に最も効果的にいらないものを排除して、流れを回復するための道具を考え出しました。それが鍼灸の最も古い古典である『黄帝内経』に書かれている九鍼です。

鍼経摘英集九鍼図

 九鍼はその後中国でも全てを使うことは稀になり、日本でも江戸時代には三種類くらいあれば十分と書かれるようになり、形や使用法も曖昧になってきてしまいました。近年の韓国ドラマでも間違った使われ方がされていて、笑ってしまいましたが。

 私も所属している東京九鍼研究会は、これらの鍼を歴史の中から掘り起こして、臨床に使っているグループなのですが、以下にその代表的な症例を上げてみたいと思います。

 2ヶ月前にタクシーと接触事故によってむちうち症と診断され、整形外科や整体に通っていたが、深部が残っていて頸は左右の可動域に制限があり、下を向くと痛む。それに伴い後頭部に頭痛がするという患者さんでした。この方は敏感な体質の方だったので、2回ほどは奇経の調整などで様子を見ていました。

 毎回施述が終わる時には愁訴は無くなっていて、当初あった背中の痛みも無くなったのですが、頸の可動域減少と頭痛が時々あるということでした。そこで肩に鋒鍼(三稜鍼)で刺絡を加えたところ、三回で全ての愁訴がなくなりました。

 この方ような敏感な方でも局所的にいらないものを排除する場合は、普通の鍼(毫鍼)よりも刺激の強い方法でもなんら問題ありませんし、相手に許容量以上の刺激を与えて、体調を悪くしてしまうこともありません。『黄帝内経』に書かれている「鋒鍼(三稜鍼)で刺絡が手技の補瀉を超越した概念だ」ということは、そのような意味なのです。

2015-10-23 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

鍼灸の解熱法(試用版七星鍼法)

家族が朝から頭痛、腰痛がして、だるいというので、熱を測らせたら38.5℃でした。
 
仕事もあったので、柴葛解肌湯を飲ませて夕方帰宅すると、やはり38.5℃だと言って苦しげでした。これは大阪の新城先生が提唱されている七星鍼法を試してみるちょうど良い機会なので、解熱剤は一切使わずに、鍼のみでトライしてみました。早々に脈を診ると肺と心が虚していました。(七星鍼法では脈の配当が経絡治療的な六部定位とは異なります)
 
そこで肺査穴と心査穴・八邪に切皮し、井穴刺絡をしました。査穴というのが七星鍼法の独自のツボです。刺絡をしている最中から煩悶がなくなり、1時間後には37.2℃(この間に発汗有り)3時間後には36.9℃となり、翌日の朝には36.3℃となり、ほぼ症状はとれたようでした。
 
恐らくインフルエンザだったと思うのですが、発熱してから24時間経たないときちんと培養出来ないため、家ではいつもウイルスが同定されないまま治ってしまいます。
 
八邪は以前から中医的な手法で使っていましたが、今までの方法より熱の下がり方が、安定しているように感じました。
 

詳しい方法は著作権があるので書きませんが、ぜひ『人体惑星試論奥義書』で確かめてみて下さい。つまらない講習会に何十万も使うなら、この本は激安だと思います。

追記:今でも中古で2万円以上しているようです。

2015-10-21 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

水野南北の食養法

クローン病での食事療法については、最も大事な部分だと思いますので、治験の方でも具体例で説明しようと思いますが、その歴史的背景は長くなってしまうので別途説明しようと思います。

クローン病の発症の環境因子としても挙げられているのは、動物性蛋白質や脂質の摂取であり、腸に負担のかからない穀食や玄米に注目したのは、食育のルーツとしても知られる石塚左玄ですが、その石塚左玄にも影響を与えたと言われている人物が、水野南北です。
水野南北は江戸時代の観相家(人相・骨格からその人の性格・運命を占う方法)で、その中心となる思想は「食べ物が運命に影響を与える」ということです。
南北はこの奥義を25歳の時、奥州の金華山山中でようやく探し当てた仙人から伝授されたのですが、そこに至る過程が非常に面白いので、少し長くなりますが、紹介します。
南北は、大坂阿波座(大阪市西区)に生まれましたが幼くして両親を亡くし、鍛冶屋をしていた叔父夫婦に育てられました。子供の頃(10歳)より盗み酒を覚え、酒代に窮して叔父の虎の子を持ち逃げしたり、天満(大阪市北区)で酒と博打と喧嘩に明け暮れる無頼の徒となってしまい、刃傷沙汰を繰り返します。
そして 18歳頃、酒代欲しさに悪事をはたらき、天満の牢屋に入れられてしまいました。ところが、牢内で罪人としているうち、牢の中にいる人の相と普通に娑婆生活を送っている人の相の間に、明らかな違いがあることに気づき観相に関心を持つようになったそうです。
出牢後、人相見から顔に死相が出ていると言われ、運命転換のため、慈雲山瑞竜寺(鉄眼寺)に出家を願い出たところ、「半年間、麦と大豆だけの食事が続けられたら弟子にする」といわれ、堂島川で川仲仕をしながら言われた通り、麦と大豆だけの食事を1年間続けたところ、顔から死相が消えたばかりでなく、運勢が改善してしまい、健康のまま78歳まで生き、大きな財を成したそうです。
こうした体験から観相学に興味を持ち、髪結い床の見習い3年、湯屋の三助業3年、火葬場の隠亡焼き3年と徹底した観相の研究を実施して観相学の蘊奥を究め『南北相法』を完成しました。
また南北50歳頃、伊勢神宮へ赴き、五十鈴川で21日間の断食と水ごりの行を行なった際、豊受大神(五穀をはじめとする食物一切の神)の祀られている外宮で、「人の運は食にあり」との啓示を受け、節食が運勢を改善することを生涯身を以て示した人物です。
『南北相法』の中で、「生まれつき陽火の薄い人も三白諸青(米・塩・大根を三白といい、蔬菜をすべて諸青という)をよくとって脾の気に勝るようにして体を養えば、一身の陽火も尽きる事なく、身体が衰えたように見えても結局良く天命を保って長生きするのである。いわんや生まれつき陽火が盛んな人が三白諸青をとって養生するならば、長寿を得ること疑いがない。」と述べています。
(#最近の本の中で、「白いものを食べるな」というコピーがありましたが、あれは白米・牛乳・白いパン・白砂糖のことですから、混同しないようにして下さい。)
食養の実践を考えている方はマクロビに行き着く人が多いかもしれませんが、マクロビは煩雑で現実性がない気がします。不食でデトックスや難病治療を考えているのであれば、西式甲田療法の方がオススメです。

2015-10-17 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

低音性耳鳴りの鍼灸治療

突発性難聴や高音の耳鳴りは治りやすいと思われている同業者の方も、低音性の耳鳴りは治り難いと思われている方が多いと思います。つい最近まで私もそう思っていました。

鍼灸治療のHPでよく見かけるのは、内耳循環を促進し蝸牛の水腫の除去や炎症の改善のためにとにかく耳の周囲にいっぱい刺すという方法でしょう。少し気の利いたところでは、古典的に腎(腎臓も含む)が耳と関係ある事を利用して、腎を立て直す治療を行なうというのが多いのではないでしょうか?

今回はどちらの方法でもなく、つまり耳の周囲はほとんど刺さず、通常の腎の立て直しもほとんど行なわずに改善した症例です。治療間隔は週1回です。

85才男性、右の耳がジーンと鳴っている。他には坐骨神経痛、便秘、糖尿病などがあり、八味地黄丸を服用している。

初診:脈診・腹診では肝の気(エネルギー)が少なく、肝を本治にして聽会を加える。
2診:耳鳴りが大から中ぐらいになった。治療は同様
3診:昼頃高音のシャーという耳鳴りがする。治療は同様で完骨、竅陰を加える。
4診;同様。肝の本治に腎・肺に関係する董氏奇穴を加える。
5診:午前中の耳鳴りは良くなった。治療は同様
6診:気にならない程度の音になった。治療は同様
9診:ほとんど耳鳴りは忘れている。

ちなみに最初から董氏奇穴を使っていたら、4回程で改善したかもしれません。

2015-10-16 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

帯状疱疹発症後の肋間神経痛と鍼灸

一ヶ月前からヘルペスになり、抗生物質で治療されていた患者さんです。
 
発疹が治まってきたら、左乳房の下の肋骨下部辺りが痛むようになってきて、病院から次に痛み止めを処方されました。ところがこの鎮痛剤が合わず飲むとクラクラするので、服用を止めて来院されました。
 
確かに発疹はなく、左の歩廊や乳根といったツボのあたりをそっと触れると痛みがあります。脈は七星鍼法の配当で脾と腎が弱く、FTで経別の反応が出ていました。
 
さらに歩廊や乳根といった辺りを通る肋間神経の基底部を調べると、筋縮付近に硬結があったので皮膚刺絡をした後、灸頭鍼を行ないました。
 
全体の治療は、七星鍼法の水穴と腎経別をフルセットで使用。最後に歩廊、乳根、筋縮、魂門に皮内鍼を入れて終了しました。
 
一週間後の2診目の2~3日前には、肋骨下部のピリピリしているのは取れたのですが、背中に少し痛みが残るとの事。同様の治療で3診目にはすべての症状が無くなり治療を終了しました。
 
ヘルペスは疲労やストレスなどで免疫が低下すると発症するので、抗生物質を使う前からでも鍼灸治療は可能です。発症後すぐの方が治るのも早いですが、時間が経った神経痛の出ているものでも治療可能です。
 
捻挫やヘルペスの新鮮なものには、鍼灸という選択肢がなかなか浮かばないものですが、古代九鍼の中には救急で使うことによって効果を発揮するものがありますので、薬の飲めない方などは、鍼灸が効果のある事を覚えておいていただけると不快な時期が短くて済みます。
2015-10-14 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

外出すると決まって下痢してしまう方の治療

この患者さんは肩の痛みで来院されたのですが、普段からどちらかといえば下痢タイプで、イベントがあって外出すると、必ず出かけた先で下痢になってしまい、外食は楽しめたことがないと相談されました。

 
初診のときから下痢に対する治療は加えていて、4診目には普段は何ともないが、友人と出かけるとやっぱり下痢してしまうとおっしゃるので、出かける前に自分でお灸をして下さいとお願いして二カ所に灸点をつけました。
 
5診目の時に「前回つけてもらったところにお灸をしたら、下痢せずに外食出来ました!」と報告があり、「実はまた関西の方に行くので、お灸する場所をつけておいて下さい」とお願いされました。
 
6診目の時に尋ねると「今回も大丈夫でした。」とのことでした。
 
この方はかなり神経質そうなタイプでしたので、この時おろした灸点は、身柱と上睆です。同じ様な考え方で、乗り物酔いにも応用出来ます。
2015-10-10 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

打鍼の道具

いつの時代も道具には妖しい魅力があるらしい。

打鍼は室町時代の禅僧であった無分翁が創始し、無分流の流れをくむ松岡意斎が正親町・後陽成両天皇に仕えて、御薗姓を賜った頃が、政治的にもピークであったようです。
 
この打鍼中興の祖である御薗意斎という人物は、臨床家というより総合プロデューサー的人物であったようです。弟子の中には高名な禅僧である、沢庵宗彭や江月宗玩がいたり、細川幽斎に仕えていた鍼博士の藤木成定もいました。
 
また、日本で初めて金鍼や銀鍼を作ったのも意斎であるといわれていて、豊臣秀吉に召し出された銀匠の丹阿弥了賀の弟子である奈良弥左衛門に鍼・槌を作らせて、「弥左衛門鍼」というブランドをプロデュースしています。
 
このように打鍼は当初から道具立にこだわりがあった訳で、現代でも意斎の呪縛から脱却出来ずにいるような気がしてなりません。その煩悩に支配された状態で使用している道具を、参考までにご紹介しておきます。
打鍼槌_01
まず槌は右の黒檀製のものを普通に使っていて、瀬川商店さんに試行錯誤して作って頂きました。左のものは中に鉛が入っていて、主に深部の邪を刺入して処理する場合に用いています。これも黒檀製で石原克己×青木仙衛コラボ企画 の夢分流打鍼小槌です。こちらは指物師でもある茶人の青木仙衛氏のサイトから購入できます。
 
道具は必ずしも高価なものである必要は無いと思いますが、打鍼の技術的奥義は振動と音も重要な要素で、そこに近づくためにも黒檀製の槌は重要だろうと思われます。柿渋といい、黒檀といい柿ノ木科のものは伝統工芸では良い仕事をしていますね。
打鍼鍼_01
次は鍼です。右側の鍉鍼(2本セットで龍睡)はチタン製(これは刺しません)で、正和堂さんから購入できます。右から3本目は銀製(これも刺しません)で、左の圓利鍼(瘀血を消散させるにはこちらが必要で、刺入します)は覆面鍼師S商店さんのものである。
 
瀬川商店さんもS商店さんもネット経由では注文が出来ないので、興味を持たれた方は、九鍼研究会の事務局に問い合わせて下さい。
 
まあ道具に関してはあくまで参考の為にご紹介するだけで、自分で愛着の出るものを選んでいただくのが一番かと思います。
2015-10-09 | Posted in 墨荘堂ブログNo Comments » 

 

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