墨荘堂ブログ

水野南北の食養法

クローン病での食事療法については、最も大事な部分だと思いますので、治験の方でも具体例で説明しようと思いますが、その歴史的背景は長くなってしまうので別途説明しようと思います。

クローン病の発症の環境因子としても挙げられているのは、動物性蛋白質や脂質の摂取であり、腸に負担のかからない穀食や玄米に注目したのは、食育のルーツとしても知られる石塚左玄ですが、その石塚左玄にも影響を与えたと言われている人物が、水野南北です。
水野南北は江戸時代の観相家(人相・骨格からその人の性格・運命を占う方法)で、その中心となる思想は「食べ物が運命に影響を与える」ということです。
南北はこの奥義を25歳の時、奥州の金華山山中でようやく探し当てた仙人から伝授されたのですが、そこに至る過程が非常に面白いので、少し長くなりますが、紹介します。
南北は、大坂阿波座(大阪市西区)に生まれましたが幼くして両親を亡くし、鍛冶屋をしていた叔父夫婦に育てられました。子供の頃(10歳)より盗み酒を覚え、酒代に窮して叔父の虎の子を持ち逃げしたり、天満(大阪市北区)で酒と博打と喧嘩に明け暮れる無頼の徒となってしまい、刃傷沙汰を繰り返します。
そして 18歳頃、酒代欲しさに悪事をはたらき、天満の牢屋に入れられてしまいました。ところが、牢内で罪人としているうち、牢の中にいる人の相と普通に娑婆生活を送っている人の相の間に、明らかな違いがあることに気づき観相に関心を持つようになったそうです。
出牢後、人相見から顔に死相が出ていると言われ、運命転換のため、慈雲山瑞竜寺(鉄眼寺)に出家を願い出たところ、「半年間、麦と大豆だけの食事が続けられたら弟子にする」といわれ、堂島川で川仲仕をしながら言われた通り、麦と大豆だけの食事を1年間続けたところ、顔から死相が消えたばかりでなく、運勢が改善してしまい、健康のまま78歳まで生き、大きな財を成したそうです。
こうした体験から観相学に興味を持ち、髪結い床の見習い3年、湯屋の三助業3年、火葬場の隠亡焼き3年と徹底した観相の研究を実施して観相学の蘊奥を究め『南北相法』を完成しました。
また南北50歳頃、伊勢神宮へ赴き、五十鈴川で21日間の断食と水ごりの行を行なった際、豊受大神(五穀をはじめとする食物一切の神)の祀られている外宮で、「人の運は食にあり」との啓示を受け、節食が運勢を改善することを生涯身を以て示した人物です。
『南北相法』の中で、「生まれつき陽火の薄い人も三白諸青(米・塩・大根を三白といい、蔬菜をすべて諸青という)をよくとって脾の気に勝るようにして体を養えば、一身の陽火も尽きる事なく、身体が衰えたように見えても結局良く天命を保って長生きするのである。いわんや生まれつき陽火が盛んな人が三白諸青をとって養生するならば、長寿を得ること疑いがない。」と述べています。
(#最近の本の中で、「白いものを食べるな」というコピーがありましたが、あれは白米・牛乳・白いパン・白砂糖のことですから、混同しないようにして下さい。)
食養の実践を考えている方はマクロビに行き着く人が多いかもしれませんが、マクロビは煩雑で現実性がない気がします。不食でデトックスや難病治療を考えているのであれば、西式甲田療法の方がオススメです。

2015-10-17 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

低音性耳鳴りの鍼灸治療

突発性難聴や高音の耳鳴りは治りやすいと思われている同業者の方も、低音性の耳鳴りは治り難いと思われている方が多いと思います。つい最近まで私もそう思っていました。

鍼灸治療のHPでよく見かけるのは、内耳循環を促進し蝸牛の水腫の除去や炎症の改善のためにとにかく耳の周囲にいっぱい刺すという方法でしょう。少し気の利いたところでは、古典的に腎(腎臓も含む)が耳と関係ある事を利用して、腎を立て直す治療を行なうというのが多いのではないでしょうか?

今回はどちらの方法でもなく、つまり耳の周囲はほとんど刺さず、通常の腎の立て直しもほとんど行なわずに改善した症例です。治療間隔は週1回です。

85才男性、右の耳がジーンと鳴っている。他には坐骨神経痛、便秘、糖尿病などがあり、八味地黄丸を服用している。

初診:脈診・腹診では肝の気(エネルギー)が少なく、肝を本治にして聽会を加える。
2診:耳鳴りが大から中ぐらいになった。治療は同様
3診:昼頃高音のシャーという耳鳴りがする。治療は同様で完骨、竅陰を加える。
4診;同様。肝の本治に腎・肺に関係する董氏奇穴を加える。
5診:午前中の耳鳴りは良くなった。治療は同様
6診:気にならない程度の音になった。治療は同様
9診:ほとんど耳鳴りは忘れている。

ちなみに最初から董氏奇穴を使っていたら、4回程で改善したかもしれません。

2015-10-16 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

帯状疱疹発症後の肋間神経痛と鍼灸

一ヶ月前からヘルペスになり、抗生物質で治療されていた患者さんです。
 
発疹が治まってきたら、左乳房の下の肋骨下部辺りが痛むようになってきて、病院から次に痛み止めを処方されました。ところがこの鎮痛剤が合わず飲むとクラクラするので、服用を止めて来院されました。
 
確かに発疹はなく、左の歩廊や乳根といったツボのあたりをそっと触れると痛みがあります。脈は七星鍼法の配当で脾と腎が弱く、FTで経別の反応が出ていました。
 
さらに歩廊や乳根といった辺りを通る肋間神経の基底部を調べると、筋縮付近に硬結があったので皮膚刺絡をした後、灸頭鍼を行ないました。
 
全体の治療は、七星鍼法の水穴と腎経別をフルセットで使用。最後に歩廊、乳根、筋縮、魂門に皮内鍼を入れて終了しました。
 
一週間後の2診目の2~3日前には、肋骨下部のピリピリしているのは取れたのですが、背中に少し痛みが残るとの事。同様の治療で3診目にはすべての症状が無くなり治療を終了しました。
 
ヘルペスは疲労やストレスなどで免疫が低下すると発症するので、抗生物質を使う前からでも鍼灸治療は可能です。発症後すぐの方が治るのも早いですが、時間が経った神経痛の出ているものでも治療可能です。
 
捻挫やヘルペスの新鮮なものには、鍼灸という選択肢がなかなか浮かばないものですが、古代九鍼の中には救急で使うことによって効果を発揮するものがありますので、薬の飲めない方などは、鍼灸が効果のある事を覚えておいていただけると不快な時期が短くて済みます。
2015-10-14 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

外出すると決まって下痢してしまう方の治療

この患者さんは肩の痛みで来院されたのですが、普段からどちらかといえば下痢タイプで、イベントがあって外出すると、必ず出かけた先で下痢になってしまい、外食は楽しめたことがないと相談されました。

 
初診のときから下痢に対する治療は加えていて、4診目には普段は何ともないが、友人と出かけるとやっぱり下痢してしまうとおっしゃるので、出かける前に自分でお灸をして下さいとお願いして二カ所に灸点をつけました。
 
5診目の時に「前回つけてもらったところにお灸をしたら、下痢せずに外食出来ました!」と報告があり、「実はまた関西の方に行くので、お灸する場所をつけておいて下さい」とお願いされました。
 
6診目の時に尋ねると「今回も大丈夫でした。」とのことでした。
 
この方はかなり神経質そうなタイプでしたので、この時おろした灸点は、身柱と上睆です。同じ様な考え方で、乗り物酔いにも応用出来ます。
2015-10-10 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

打鍼の道具

いつの時代も道具には妖しい魅力があるらしい。

打鍼は室町時代の禅僧であった無分翁が創始し、無分流の流れをくむ松岡意斎が正親町・後陽成両天皇に仕えて、御薗姓を賜った頃が、政治的にもピークであったようです。
 
この打鍼中興の祖である御薗意斎という人物は、臨床家というより総合プロデューサー的人物であったようです。弟子の中には高名な禅僧である、沢庵宗彭や江月宗玩がいたり、細川幽斎に仕えていた鍼博士の藤木成定もいました。
 
また、日本で初めて金鍼や銀鍼を作ったのも意斎であるといわれていて、豊臣秀吉に召し出された銀匠の丹阿弥了賀の弟子である奈良弥左衛門に鍼・槌を作らせて、「弥左衛門鍼」というブランドをプロデュースしています。
 
このように打鍼は当初から道具立にこだわりがあった訳で、現代でも意斎の呪縛から脱却出来ずにいるような気がしてなりません。その煩悩に支配された状態で使用している道具を、参考までにご紹介しておきます。
打鍼槌_01
まず槌は右の黒檀製のものを普通に使っていて、瀬川商店さんに試行錯誤して作って頂きました。左のものは中に鉛が入っていて、主に深部の邪を刺入して処理する場合に用いています。これも黒檀製で石原克己×青木仙衛コラボ企画 の夢分流打鍼小槌です。こちらは指物師でもある茶人の青木仙衛氏のサイトから購入できます。
 
道具は必ずしも高価なものである必要は無いと思いますが、打鍼の技術的奥義は振動と音も重要な要素で、そこに近づくためにも黒檀製の槌は重要だろうと思われます。柿渋といい、黒檀といい柿ノ木科のものは伝統工芸では良い仕事をしていますね。
打鍼鍼_01
次は鍼です。右側の鍉鍼(2本セットで龍睡)はチタン製(これは刺しません)で、正和堂さんから購入できます。右から3本目は銀製(これも刺しません)で、左の圓利鍼(瘀血を消散させるにはこちらが必要で、刺入します)は覆面鍼師S商店さんのものである。
 
瀬川商店さんもS商店さんもネット経由では注文が出来ないので、興味を持たれた方は、九鍼研究会の事務局に問い合わせて下さい。
 
まあ道具に関してはあくまで参考の為にご紹介するだけで、自分で愛着の出るものを選んでいただくのが一番かと思います。
2015-10-09 | Posted in 墨荘堂ブログNo Comments » 

 

打鍼の意味とその潜在力

打鍼は室町時代後半から江戸時代に行われていた、日本独自の鍼の治療システムのことを言います。鍼灸は中国から他の文化と同じように伝えられてきましたが、室町時代の末頃、禅宗の僧であった無分(無紛、または小川無分)が重症であった母親の病気を治すために考案したと伝えられています。

打鍼がユニークなところは、中国伝統医学の鍼灸理論である経絡を使わない、中国鍼灸にはない槌を使って円利鍼を叩いて刺入する、邪を排除せずに、腹部だけで全身の症状に対応するなどと説明されています。打鍼術とか打鍼法という表現をすると鍼を刺す手技の一つと思われてしまいますが、そのような捉え方では打鍼の本質を見失うのではないかと危惧します。

鍼灸抜萃

海外に向かって日本鍼灸とは何か?と発信するのであれば、こんなに適しているものはないのですが、長らくその技術も伝承されない状態であったため、学術団体でもその価値に気付いている人は多くありません。

日本漢方で証の決定に重要な役割を担っている腹診も、打鍼の構築とともに作られてきたことが、近年の研究で明らかになってきています。さらにあの大徳寺の沢庵宗彭の『刺針要致』に書かれているように「病、頭に在るも、亦腹に於いて刺し、脚に在るも亦腹に於いて刺す。一身の病、すべて腹に於いて刺す。」と言う、すべてを腹への刺鍼で治してしまうという原理は一体どんなものなのでしょうか?

長年悩んでいた打鍼の原理が解決したのは、畏友齋藤友良先生の論文を読んでからで、今年はついに外部講師として研究会にお呼びして、その全貌を公開していただきました。

短い言葉で表現するなら、「体幹の円柱形を保ち、腹力(腹腔内部の圧力)を保ち、内臓を正しい位置に固着させる」方法論なのですが、先生の手順はかなり複雑なため、夢分流で簡素化してトライしてみたのが、以下の写真です。

打鍼効果_01

これは腹部の打鍼しか行っていないのですが、首の皺、左の肩甲骨の位置が変化しているのが確認できると思います。齋藤先生の実技はもっと精度の高いものでしたので、鼻や目、下肢の感覚も変化させていました。

つまり打鍼が潜在的に持っている臨床パワーこそが、その本質に在るのだと実感させられました。

浅く打つは表邪を散らす、為なれば、療治の針は、深く立つべし。『鍼歌一百首 無文流秘訣』

無分翁の真伝についてさらに知りたい方はこちら

2015-10-07 | Posted in 墨荘堂ブログNo Comments » 

 

美容鍼灸の不思議な効能

このブログでこのテーマとは意外な感じの方もおられるとは思いますが、書いてる本人もその1人です(笑)いずれにしてもフェイシャルとかリフトアップに関することだけでは、絶対に記事にするつもりはありませんので、最後までお付き合いください。
さて、今回施術させていただいた患者さんは、美容鍼灸が目的で来院された訳ではありません。来院された当初は肩こりや生理痛・不正出血でしたが、本来の目的は基礎体温の矯正と妊娠です。
とにかく最初は基礎体温表が、かろうじて二層にはなっているものの曲線自体はギザギザで、排卵日はとても特定出来る状況ではありませんでした。またイライラしたことがあると、それに伴って体調もかなり悪くなる方です。
それでも6ヶ月ほど衝脈を中心にした治療を行なって、不正出血も減り、基礎体温の曲線も正常になってきた頃に生理が遅れている月があり、「やったー妊娠か?」と期待したのですがこの時は残念ながら妊娠していませんでした。
今から考えると、かなり期待出来そうだったのに、ダメだったので目先を変えようと思ったのかもしれませんが、なぜ美容鍼灸だったのかはわかりません。何かが降りてきたってヤツでしょうか。
墨荘堂での美容鍼灸は九鍼研究会のF先生方式と頭部の活法を組み合わせた方法で、鍼は顔面に刺さない方法でやっています。刺しませんが使っている鍼は20番の金の大鍼です。
施術後「目がぱっちりした」とおっしゃって帰られたのですが、2週間後に来院されたときに「前回の美容鍼灸で気分がリセットされて、イライラが減り基礎体温の曲線も良くなりました」と言われるのです。これは正直、意外でしたが、女性の場合このような要素は無視できないということを改めて勉強させていただきました。
この方はその後、董氏奇穴の不妊に関するツボを追加したところ、さらに基礎体温の状態も改善し、無事妊娠・出産されました。
2015-10-06 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

鍼灸によるマラソンの事前ケア

このエントリーは、鍼灸の古典的手法を使った、東京マラソンの事前ケアに関する内容です。
妻の友人が10倍の難関を突破して、東京マラソンにエントリーするというので、ぜひ事前に疲れを軽減する鍼をやらせて下さいとお願いしたところ、了解して頂いたので、来院してもらいました。
事前にいつものコンディションを聞いたところ、左膝の内側が痛むのと、大腿の前面が痛むということでした。七星鍼法の理論によれば大腿前面の痛みは、骨盤の歪みを検出して矯正してから次の治療を行うとあるので、骨格矯正鍼が必要かなと期待して検査したところ、左右差がなかったので、骨盤矯正は行いませんでした。
脈は心包虚と脾虚があったので心包査穴と脾査穴に置鍼して、走ると痛みが出る左膝の内側側副靭帯を活法で矯正し、ハムストリングスを鍼で緩めておきました。最後に師匠が脛下と呼んでいるツボ(七星鍼法では胃木穴)と陰谷の上方、浮郄の外上方にチタン粒を貼って終了しました。
翌日終了後にメールを頂きましたので、許可を頂き、掲載させて頂きます。
今日は本当にありがとうございました。
処置して頂いた左ヒザは全く痛くなりませんでした。いつもは5km過ぎには痛くなってたのに、さすがです。モモは全体筋肉痛ですが、前にフルマラソンを走った時より普通に歩けますよ。階段が降りれるのにビックリでした。
何だか不思議な感じです。
フルマラソンを4時間台で走れる方なので、鍼灸や整体も経験済みだと思うのですが、30分位で終わってますので、不思議な感じなのでしょうか?
世にはスポーツ鍼灸なるものがありますが、古典的にアプローチしている人は少ないかもしれません。わざわざ違う名称にしなくとも古典的な治療でも十分対応出来ることをアピールしたかったので、ちょうど良い機会を与えて頂きました。
以前は膝に関する症状は結構時間がかかっていたのですが、腱の矯正を使うようになってから短時間で処理できるようになりました。この方法は事後の疲労などもすぐ緩和できますので、お試しあれ。
2015-10-02 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

鼠径部の痛みの鍼灸治療ー経筋治療のコツー

先日見えた患者さんの話。この患者さんはいわゆる健康管理で行っている方で、先日はたまたま朝から右の鼠径部が痛く、歩き始めや過度に屈曲すると痛むということでした。

痛む場所を詳しく尋ねると、上前腸骨棘の辺りで、ツボでは髀関と言うツボの辺りでした。仰向けで診察して、他にどこか痛む場所はないですか?と尋ねてみると、同じ右側の二番目の足の指も痛いということでした。(この瞬間に、これはラッキーと思わず小躍りしました。こういうヤツは絶対逃してはけません!)
そこでもう少し詳しく辺りを探っていくと、内庭穴よりやや上方と、その内側(母指側)が痛いということでした。そこで痛む部分二カ所にせんねん灸をしました。
位置的にはせんねん灸の台座がくっつく位の間隔といえば解りやすいでしょうか。一壮終わると、外側(内庭穴の上)が感じないと言われるので、もう一壮して俯せになってもらうと、「あれ?痛くありません」とのこと。

俯せの治療を終わって起きて動かして頂くと、ひとしきり膝を上げ下げして、「もう全然大丈夫です。さっきまでの痛みはなんだったんでしょうか?」まあそうですよね。

同業者の方は良くお分かりでしょうが、この症例では経筋治療を使っています。某大学の教授は滎穴を使っていますが、ツボは限定せずに、経筋沿いの痛む部分を丹念に探すのが、コツです。特に足の陽明経筋は第4指の方まで流注していますので、その辺りをお忘れなく。
翌日連絡があり、「あれから鼠径部はまったく痛みません」とのこと。(実は明日連絡くださいと頼んでおきました。)
『黄帝内経』にある本来の経筋治療は火鍼を使いますが、お灸でも良いと思います。最近のトレンドでは間違いなく打鍼を使いますね。打鍼で腹部を整えると、当然骨盤の負担も減りこの症例のようなものは解決してしまうことが多いです。ポイントは意斎流や印流にも記載がある細キ筋の扱い方ですが、これはまた打鍼の記事で触れたいと思います。

 

2015-09-28 | Posted in 治験報告No Comments » 

 

TVCMに注意!葛根湯と銀翹散

急に寒くなり風邪を引きやすい季節になったせいか、テレビでも風邪薬のCMを良く見かけるようになりました。
 いつから販売していたか判らないのですが、最近では薬局でも処方箋なしに銀翹散(ぎんぎょうさん)が買えるようになったのですね。以前は日本で売っていなかったので、中国に行った時に「銀翹解毒片」を大量に買ってきたりしていたので、これはすごく良い事なのですが、テレビCMの症状説明はちと問題がある様な気がするので、お知らせしておきます。
 風邪の初期に飲む薬は季節によって侵入する邪気が異なるため、冬は葛根湯、夏は銀翹散と憶えておくと判りやすいです。
 銀翹散は、中国の清の時代の『温病条弁』という温病の解説書に記載されている漢方薬で、風熱の邪が病気の原因です。それに対し冬の風邪は寒さによる風寒の邪が病気の原因で傷寒と呼ばれます。チャングムにも出てきていましたよね。
 ちなみに「江戸時代は鎖国をしていたため、中国で最新の「温病」の考えが入らなかった。」という解説を見かけますが、江戸時代でも中神琴渓の『温病論国字解』や荻野元凱の『温病余論』や森立之の『温病論剳記』など多数の解説書があり、温病の考えが入らなかったなどという事はありません。
 温病の症状は発熱・わずかに悪風・悪寒し、無汗あるいは汗がすっきり出ない・頭痛・口渇・咳嗽・咽痛・咽の発赤・舌の尖端や周辺が紅色、舌苔が薄白あるいは薄黄・脈が浮数などで、一般の方に解りやすい鑑別方法は咽の痛み、舌の尖端や周辺が紅色、風寒が頸の付け根辺りに感じるような身体痛がみられないのが特徴です。
 また温病は短期間で熱感に移行するため、現代のインフルエンザのような流行性ウイルス感染症に当たると考える人もいます。このため抗ウイルス作用の強い「銀翹散」というレッテルが貼られて、夏に多い風熱の邪に関する条文は無視されていく訳です。(もちろん冬でも風熱の邪が無い訳ではないし、銀翹散に抗ウイルス作用が強いのも事実です。)
 以前に漢方薬の副作用が問題になった事がありましたが、あれは誤治であって副作用ではありません。薬局でもよほど勉強していない限りは、メーカーのプロパーの言いなりですから自分の症状は自分で判断する方が良いでしょう。
 葛根湯も銀翹散も代表的な方剤であり、効果があるので、いつも持っていておかしいと思ったらすぐに飲めるようしておく事が、風邪を悪化させないコツです。これが出来るところがエキス剤の便利なところです。
最後にもう一度目標を書いておきますので、参考にして下さい。
葛根湯:ゾワゾワしたり、寒け強く、頸の付け根や肩が強ばる、身体痛あり
銀翹散:熱感が強い、咽の痛み、舌の尖端や周辺が紅色、口が渇く
インフルエンザワクチンを打たない派、打てない派の鍼灸による健康管理術はこちら
2015-09-25 | Posted in 墨荘堂ブログNo Comments » 

 

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