TVCMに注意!葛根湯と銀翹散

急に寒くなり風邪を引きやすい季節になったせいか、テレビでも風邪薬のCMを良く見かけるようになりました。
 いつから販売していたか判らないのですが、最近では薬局でも処方箋なしに銀翹散(ぎんぎょうさん)が買えるようになったのですね。以前は日本で売っていなかったので、中国に行った時に「銀翹解毒片」を大量に買ってきたりしていたので、これはすごく良い事なのですが、テレビCMの症状説明はちと問題がある様な気がするので、お知らせしておきます。
 風邪の初期に飲む薬は季節によって侵入する邪気が異なるため、冬は葛根湯、夏は銀翹散と憶えておくと判りやすいです。
 銀翹散は、中国の清の時代の『温病条弁』という温病の解説書に記載されている漢方薬で、風熱の邪が病気の原因です。それに対し冬の風邪は寒さによる風寒の邪が病気の原因で傷寒と呼ばれます。チャングムにも出てきていましたよね。
 ちなみに「江戸時代は鎖国をしていたため、中国で最新の「温病」の考えが入らなかった。」という解説を見かけますが、江戸時代でも中神琴渓の『温病論国字解』や荻野元凱の『温病余論』や森立之の『温病論剳記』など多数の解説書があり、温病の考えが入らなかったなどという事はありません。
 温病の症状は発熱・わずかに悪風・悪寒し、無汗あるいは汗がすっきり出ない・頭痛・口渇・咳嗽・咽痛・咽の発赤・舌の尖端や周辺が紅色、舌苔が薄白あるいは薄黄・脈が浮数などで、一般の方に解りやすい鑑別方法は咽の痛み、舌の尖端や周辺が紅色、風寒が頸の付け根辺りに感じるような身体痛がみられないのが特徴です。
 また温病は短期間で熱感に移行するため、現代のインフルエンザのような流行性ウイルス感染症に当たると考える人もいます。このため抗ウイルス作用の強い「銀翹散」というレッテルが貼られて、夏に多い風熱の邪に関する条文は無視されていく訳です。(もちろん冬でも風熱の邪が無い訳ではないし、銀翹散に抗ウイルス作用が強いのも事実です。)
 以前に漢方薬の副作用が問題になった事がありましたが、あれは誤治であって副作用ではありません。薬局でもよほど勉強していない限りは、メーカーのプロパーの言いなりですから自分の症状は自分で判断する方が良いでしょう。
 葛根湯も銀翹散も代表的な方剤であり、効果があるので、いつも持っていておかしいと思ったらすぐに飲めるようしておく事が、風邪を悪化させないコツです。これが出来るところがエキス剤の便利なところです。
最後にもう一度目標を書いておきますので、参考にして下さい。
葛根湯:ゾワゾワしたり、寒け強く、頸の付け根や肩が強ばる、身体痛あり
銀翹散:熱感が強い、咽の痛み、舌の尖端や周辺が紅色、口が渇く
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