墨荘堂ブログ
難聴とヘルペスの鍼灸治療
静かなところでは聞き取れるが、雑踏の中にいると低音の耳鳴りがしてよく聞こえないということで来院。来院される前数週間はかなり忙しく、「耳鼻科では感音性難聴と診断された。疲れていて夜中に目が覚める。耳は飛行機に乗っている時のように詰まっている感じが抜けない。」ということでした。
診断するとシステムは奇経でしたが、「詰まっている感じが抜けない」ということでしたので、突発性難聴の可能性もあると思い、初診時は聴会などを主に首の周りなどを治療しました。
4日後に「3日ぐらいは良かったが、戻ってしまい前よりも悪い。あと、右の目頭にヘルペスが出来てこめかみから側頭部がピリピリする」ということでした。
診断するとやはりシステムは公孫・後谿、内関・申脈の奇経で変わらずだったので、今回はヘルペスもありましたので、打鍼と、攢竹、翳風の刺絡、そして董氏奇穴として、火硬、花骨1を使いました。加えて脈で気になっていた腎経の腎関、復溜、京門、腎兪にがっちり施灸しました。
治療中から症状は軽減していて、終了後もわずかに残っているということでしたが、あえてこれ以上の刺激は加えずに終了としました。
さらに4日後また来院されましたが、難聴もヘルペスも症状もなくスカッとしているということでしたので、これで治療を終了としました。
好酸球性副鼻腔炎の鍼灸治療
好酸球性副鼻腔炎は、両側の鼻の中に多発性の鼻茸ができ、手術をしてもすぐに再発する難治性の慢性副鼻腔炎と言われています。ステロイドを内服すると軽快する特徴がありますが、ステロイドを長期間服用することは避けた方が良いとされているので、難治という訳です。
はっきりした原因はわかっていませんが、最近になり鼻、気管、肺すべてに関連する全身性の呼吸器疾患であり、鼻だけの病気ではないのではないかと考えらえています。こういう疾患は西洋医学は苦戦することが多いですね。
難治というのはあくまで西洋医学から見た視点での考えですから、伝統医学で難治でないことは十分に考えられます。
【症例】
8年前に手術したが再発し、黄色の膿が出て、匂いが感じられない。X年10月に来院。X年2月の検査では好酸球数が11.1(正常値は0〜6.0)最初は炎症を取るために顔面の細絡から刺絡、他は打鍼で対応。2回目から重い感じが減りスッキリする。5診まで同様の治療。
炎症が落ちついてきたため6診からは打鍼と董氏奇穴の足駟馬、分金、馬金水などを追加使用しています。
好酸球数はX+1年2月以降は6台で推移しているため、症状が現れた時だけ治療しています。
このように難治という名前がつくと暗い気持ちになりますが、伝統医学では必ずしもそうでないものもたくさんありますので、本当の意味でのセカンドオピニオンを探していただきたいと思います。
不妊治療の本当の問題点
先日放送されていたNHKプロフェッショナル仕事の流儀の再放送は、コウノドリのモデルになった産婦人科医の荻田和秀先生の話でしたが、色々と考えさせられることが多いと思いました。
番組の最後に、脳梗塞の妊婦さんから赤ちゃんを帝王切開して出血の危険の中で母子ともに救ったエピソードは、荻田先生の職人技が光っていて、番組の最後を飾るにふさわしいものでした。
放送自体は個人の専門性を取り上げているので、何の問題も無いのですが、こういう昔気質の先生が活躍しなければならない背景には、体外受精ありきの安易な不妊治療が増えているからと思わざるを得ません。番組のケースの方も4年間の不妊治療の後に妊娠したと言っていました。
このような場合、西洋医学では時間がかなり経過しているので、直接の因果関係は無いと考えるのでしょうが、伝統医学ではそもそも受精し難いというところに根本原因があると考えます。体外受精でそこをクリアしてもそのしわ寄せが周産期のリスクを高めているように感じます。
妊娠してからの治療も薬が十分に使えないため苦労があることが示されていましたが、鍼灸では薬を使わないので、問題があまり起きません。つわりや逆子妊娠中の風邪などで鍼灸が効果を上げているのもそのような理由です。もちろん医師の管理下で行うことが前提ですが、ぜひ鍼灸も選択肢の一つとして検討してみてください。
不妊治療の症例はこちら
妊娠管理の方法はこちら(更新しました)
肩凝り解消で思わぬ被害
足のだるさやむくみと鍼灸
睡眠障害の一つでメディアにも取り上げられるようになってきた「むずむず脚症候群」の治療に手の前腕のツボを使って治療し、良い結果が出ていることが報告されたりしています。「むずむず脚症候群」も神経の問題ではなく、血行の問題だと思いますが、むくみや足のだるさは血行(特に足から体幹に戻る方)の経路を確保して、循環不全の原因になっている臓器を調整すれば、早期に回復が望めるものだと思います。
【症例1】
むくみの症例ですが、男性で脚は細いのですが、足首付近から下がパンパンになっている方が来院されました。
そこで、足の三里・陰陵泉・復溜・腎兪と言うツボに鍼を、水分・命門と言うツボに灸をして、足全体に円利鍼で散鍼を行いました。
一ヶ月後にお見えになった時に尋ねてみると、「あの後むくみは無くなった」とのこと。確かに足首は足と同じ細さに戻っていました。
【症例2】
体がだるく、足がむくむ。
この方は三焦システムの異常で、臓器も腎の機能が低下している状態でしたので、陰交・腎関・腎査と言うツボを使い、腰や脚の調整を行い二回ほどで症状がなくなりました。
鍼灸の場合は体に負担をかけずに、余分な水を排出することが出来るので、憶えておいて頂くと良いと思います。
鍼灸から見た偏頭痛の理由
頭痛外来をやっている病院のHPなどを見るとすぐにわかる事は、治療の要点は鑑別の重要性と薬を適切に使う事です。薬を飲んで痛みは止まるが、治った訳ではありません。これは従来から行なわれている糖尿病や高血圧などの治療となんら変わりません。西洋医学では症状を抑えるために薬を飲み続ける必要があり、それで年間何十兆円も使っているのですから。
2014年7月1日に放送された「林修の今でしょ!講座 3時間スペシャル」は、いつもように鍼灸は肩凝り、腰痛というくくりで解説されていました。
まあこのくくりは演出上しょうがない部分もあるので、突っ込まない事にしようと思ったのですが、偏頭痛の説明で、「西洋医学は適切な薬を使えば痛みがすぐ止まる、一方東洋医学では鍼灸や漢方を使って頭痛が起きないような体を作ろうとするので、今の発作を止めたい時には向いていない」という趣旨の発言があり、これには違和感を覚えました。
まず、東洋医学では「頭痛が起きないような体を作ろうとする」というのは漢方の先生の発言としては判らないでもないのですが、鍼灸師が本当にこういう発言をしているのかが妙に気になり、色々調べると、きちんと鍼灸の立場から偏頭痛の原因に言及しているところはほとんど無いことに気付きました。
これでは東洋医学での治療は「頭痛が起きないような体を作る」ことを目指していて、発作中の痛みは取れないと思われてもしょうがないです。
おそらく以下の説明が真の原因と思われるので、私の妄想に過ぎないのか、そうではないのかこれを読んでいる諸兄にご判断頂きたいと思います。
まず、西洋医学で一番有力視されているのは、何らかのきっかけで三叉神経が刺激され、脳血管を拡張する痛み物質が出ることによって頭痛が引き起こされるという説で、トリプタン製剤という、拡張した脳血管を元に戻し、かつ脳の興奮を抑える薬を適切に使うためにも、頭痛の種類をきちんと見極め、くも膜下出血、脳腫瘍、脳出血、髄膜炎、ヘルペスウイルスによる帯状疱疹などを除外するという治療が行なわれます。
これは半分は正しいです。
けれども西洋医学は解剖学の発達でとにかくミクロに原因を追求するようになってしまったため、全体像を見ていないことが多く、偏頭痛の場合も同様です。
まず動脈は心臓というポンプがあるため、血管の配置もあり、あまり邪魔されずに末端(指先や脳など)に血液を送る事が出来ます。
問題は頭部から戻って来る血液で、静脈は末端にポンプがないため、筋肉のポンプ作用を利用して心臓に戻ります。ところが筋肉が過度の疲労やストレスで堅くなってくると十分な循環を確保出来なくなります。
これを頭部で考えればもう明らかでしょう。
頸肩がしまって(凝って)頭の血液量が飽和状態になっているのに加え、さらに血管が拡張すれば、頸肩の筋肉を緩めない限りこの脳の興奮状態が改善するとは思えません。
コーヒーや薬を飲んで一時的に血管を収縮させても、また起こるのはこれが理由です。
ましてや慢性的に薬を飲み続ければ、薬は選択的に頸肩だけに効く訳ではないので、手足など収縮しては困るところが収縮して、全身の循環に問題を起こすことも考えられます。
もうお気づきの方もおられるでしょうが、今までの説明は緊張型頭痛の説明ではありません。簡単に言えば偏頭痛とは緊張型頭痛+血管の拡張と考えれば良い訳です。
これは工藤訓正先生が「脳卒中窒息説」として1956年の『漢方の臨床』3巻5号にすでに発表されていますが、誠に達見であると思います。
頸肩の緊張を取るのは鍼灸の最も得意にするところで、発作中の痛みも全身調整が出来る鍼灸師さんなら、簡単に止める事が出来ます。
【症例】
3日前から頭痛がひどく、今回はロキソニンを飲んでも効きが今ひとつで、場所もいろいろな部分が痛み、肩も非常に凝っているという患者さん。
この方は奇経に異常が出ており、照海、外関と列欠、臨泣で調整し、打鍼で腹部のブロックを取り、攅竹と肩背から刺絡をしました。
終了後にどこか残っていないか伺うと、「治療途中から頭痛がなくなるのがわかりました。」ということで終了としました。
副鼻腔炎の鍼灸治療
もともとハウスダストと思われるアレルギーがあって鼻水が出るようになり、好酸菌性副鼻腔炎と診断された方の治療です。8年前に耳鼻科で手術をしましたが、最近また黄色の膿が溜まるようになってきて、匂いも感じられないという状況でした。
耳鼻科ではまた手術を勧められたらしいですが、蓄膿症や副鼻腔炎の手術は、原因を除いている訳ではないので、再手術ということが良くあります。手術もやった後は楽になりますが、何度も繰り返せば体に対するダメージも皆無であるとは言えません。その点鍼灸は傷などのダメージはほとんど有りませんし、甚だしい骨格の異常などが無ければ、完治も可能です。
この方も他の蓄膿症や後鼻漏と同じような治療で、主なものは頬部の細絡刺絡ですが、全身のシステムの調整や董氏奇穴も行っております。
やはり初回はかなり瘀血が出たので、2回目に様子をお尋ねしたところ、治療後に黒い膿(本人談、恐らくは濃度の高い膿)が出て、鼻の周囲の重さが取れ、匂いも感じるようになりましたとのこと。
現在4診目ですが、膿も薄れてきて、すっきりし、鼻水も減少したということでした。まだ治療途中ですが、蓄膿症や副鼻腔炎は患者さんの実感がかなり変化するので、報告することにしました。
鍼灸による姙娠管理と逆子の灸
逆子の灸は色々なところに取り上げられていて有名ですが、以前に産婦人科に勤務していた時のことを書いておきます。
逆子の灸は足の小指にある至陰というツボにするのですが、8ヶ月くらいの患者さんに医師に超音波で確認してもらいながら灸をやってみたことがあります。その時は灸をしたその場で回旋していました。
通常、臍帯巻絡(さいたいけんらく)といって、へその緒が巻きついている赤ちゃん以外はすぐに回旋することが多いようです。10人以上やりましたが、4~5回以内の治療で回旋する人が多かったように記憶しています。
また、妊娠中も安産のために三陰交というツボにお灸をすえる方法もお勧めです。この方法は『女性の一生と漢方』という名著に書かれていて、胎盤が安定する5ヶ月くらいから始めて出産まで徐々に増やしていきます。この本の著者の石野先生は「30年もやっているが一度も副作用と思えるものを見たことがない」とか「母体のためだけでなく、生まれてくる子供にも著しい効果が見られる」と書かれています。この方法で4~5人の妊婦さんを管理してみたことがあるのですが、皆、安産だった記憶があります。
最近では体外受精により根本的に妊娠継続の準備ができていない人が受精という関門を越えてしまうので、周産期になって脳梗塞や高血圧など、薬を通常のように使えないケースが増えていますが、そのような方にも刺絡や鍼灸により、胎児にも安全な治療法が数多くあります。もちろん難しいケースの方は安定期に入ってからすぐ始めた方が効果がありますし、安産につながります。
近年、産婦人科が激減して助産師さんで出産される方が増えているようですが、そう言う方向をめざしている自己管理のできる方には、ぜひ試していただきたいです。
その他不妊や妊娠中の症状に関してはこちら
鍼灸で顔面神経麻痺を短期間に治すには
顔面神経麻痺はヘルペスウィルスの感染が原因のハント症候群によるものがあり、西洋医学では難聴や顔面麻痺は後遺症として残るケースもあるため、早期の治療が望ましいとして抗ウイルス薬、ステロイド薬の服用や点滴注射を行うことがあります。
この患者さんは、某都内大手私立病院でハント症候群の顔面神経麻痺と診断され、入院してステロイドの治療をしましょうと言われたのですが、ステロイドはあまり使いたくないということで入院せず、鍼灸で治療を希望され来院されました。
後太陽、翳風、頬車、豊隆、陽白、下関、地倉、承漿などのツボを使い、5回ほどで前額部に皺がよるようになり、兎眼や頬の麻痺もなくなり、口に空気をためても漏れなくなり、治療を終了しました。以後再発はありません。大学病院系の鍼灸治療でもこれらのツボに置鍼15分などという治療をしているようですが、これでは治療期間の短縮は望めません。ツボの組み合わせや関連する経絡にエネルギーを供給するシステムの調整などを併用すると治療期間を短縮できますが、それには古典を臨床に使用するためのノウハウが必要です。
後から考えると耳痛や耳の周囲の水疱を記録していないので、ハント症候群ではなかったかもしれないのですが、以前に何ヶ月もステロイドを使われてから顔面神経麻痺で来院された方などは、今回のようにすぐには改善しませんでした。これが第2のポイントです。
最初の方のように明確にステロイドを拒否される方は別ですが、初診時の病院で適切な東洋医学的対処があれば、患者さんの負担も軽くなるとつくづく感じた次第です。
アトピー性皮膚炎の鍼灸治療
今回の患者さんは鍼灸学校の学生さんです。ということでいろいろな鍼を試した結果報告も兼ねています(笑)
筋肉質なのですが、元々体は弱く、のぼせ、手足の冷え、下痢等があったそうです。今でも汗をかきやすかったり、体や眼の疲れ、きちんとした睡眠がとれない等があります。






