【打鍼治験#1】呼吸時の背中の痛み
打鍼は打鍼中興の祖である、御薗意斎の学術ブレーンであった沢庵宗彭(安土桃山時代から江戸時代前期にかけての臨済宗の僧。大徳寺住持)が『刺鍼要致』に「病、頭にあるも、また腹において刺し、脚にあるもまた腹において刺す。一身の病、すべて腹において刺す。」と残しているように、腹部への刺鍼だけで、全身の症状に対応する日本独自の鍼術です。
とはいえ、腹部への刺鍼だけで治せるとしたらどんな原理なのか?ということを追求していた時にある先生のやり方に出会い、現在その先生と共に無分流打鍼を再構成しています。詳しくはこちら。これが発表できるようになるかどうか分かりませんが、臨床例は残しておこうと思います。
症状は息を吸うと、背中が痛む。そのために呼吸が浅い。鍼灸治療はしてもらっていたが、前述の症状だけが取れないという患者さんの症例です。
痛む前の状況を訪ねてみると、胃腸の状態が悪く、初診時も胃の張りや手足の冷えは訴えておられましたので、打鍼メインでいくことにしました。恐らく胃腸の位置を調整して、胸郭のスペースを広げるという打鍼の基本的パターンであろうと思われます。
腹診をすると、腹力は左が弱く左の天枢付近に細き筋があります。上部は肺先付近に強みがあるので、火曳きの鍼、負け曳きの鍼をした後、勝ち曳きの鍼で強みを調整しました。この時の刺激量は、槌の音と『針治書』の迎随の記載を参考にその場で決定していきます。
終了後尋ねると、「呼吸が楽にできるようになりました。背中も痛くないです。どうしても残って取れなかったのですけど。」ということでした。