低音性耳鳴りの鍼灸治療

突発性難聴や高音の耳鳴りは治りやすいと思われている同業者の方も、低音性の耳鳴りは治り難いと思われている方が多いと思います。つい最近まで私もそう思っていました。

鍼灸治療のHPでよく見かけるのは、内耳循環を促進し蝸牛の水腫の除去や炎症の改善のためにとにかく耳の周囲にいっぱい刺すという方法でしょう。少し気の利いたところでは、古典的に腎(腎臓も含む)が耳と関係ある事を利用して、腎を立て直す治療を行なうというのが多いのではないでしょうか?

今回はどちらの方法でもなく、つまり耳の周囲はほとんど刺さず、通常の腎の立て直しもほとんど行なわずに改善した症例です。治療間隔は週1回です。

85才男性、右の耳がジーンと鳴っている。他には坐骨神経痛、便秘、糖尿病などがあり、八味地黄丸を服用している。

初診:脈診・腹診では肝の気(エネルギー)が少なく、肝を本治にして聽会を加える。
2診:耳鳴りが大から中ぐらいになった。治療は同様
3診:昼頃高音のシャーという耳鳴りがする。治療は同様で完骨、竅陰を加える。
4診;同様。肝の本治に腎・肺に関係する董氏奇穴を加える。
5診:午前中の耳鳴りは良くなった。治療は同様
6診:気にならない程度の音になった。治療は同様
9診:ほとんど耳鳴りは忘れている。

ちなみに最初から董氏奇穴を使っていたら、4回程で改善したかもしれません。

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