書痙の鍼灸治療

今回の患者さんは書痙(しょけい)を訴えて来院されました。

 書痙とは、字を書こうとする時、または字を書いている最中に、手が振え、または痛みが発生し、字を書くことが困難となる書字障害つまり、動作特異性で、上肢の局所性ジストニアです。

 症状は字を書こうとするときに手が振え、細い字を書こうとするとペンが止まってしまい力が入らないようで、もう一方の手で支えなければ字が書けなくなる状況で、手(特に大腸経)や肩の凝りはかなりありました。
 この方は緊張しやすい性格とは思いますが、特に大勢の人前で書く職業でもなく、病院に行くより先に来院されたので、小脳などを対象にした西洋医学的検査や診断はうけておりません。

治療
 全身の状態は心包・三焦システム、特に中焦の異常で、大腸経と頸肩の凝りが顕著にありました。そこで心包・三焦システムの調整と中睆に鍼をして、大腸経は董氏の倒馬鍼方、頸肩は皮膚刺絡をした後に上肢全体の筋・腱を調整しました。

 この後、字を書いてもらうと「あっ書けるようになりました。」とすらすらと書いていました。念のため小さい字も書いてもらいましたが、問題なく書けているようでした。その後も再発したという連絡はありません。

 ジストニアに関して鍼灸治療が有効であるという報告がありますが、私はまず鍼灸を選択してみるべきと思います。

 他の疾患でも書いていますが、一般的には人前で書く時に振える場合、神経内科などが担当科となり、消炎鎮痛剤ではない抗うつ剤系の薬物療法が最初から選択されることが多いです。この手の薬を飲んでから来院される方は本当に治りが悪いので困りますね。

 神経症の治療には半年以上の長い期間が必要なので、何ヶ月も服用してから鍼を選ぶのであれば、最初から鍼を選んでもらえば、この患者さんのように治療期間は短くて済むという訳です。ぜひご検討ください。

【症例2】

4〜5年前から字を書く時に手が震えるようになった。ホワイトボードは平気だが人が見ている前で書こうとすると、特にひどくなるという訴えでした。

パニック障害の治療によく使われる、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のランドセン(リボトリール)を処方されているけれども変化がないので、鍼灸を試してみたいとのこと。

 この方も全身の状態は心包・三焦システム、初回は上焦、その後中焦の異常で、打鍼で中焦のブロックを除去し、肺経、大腸経、三焦経の筋・腱を調整しました。さらに董氏の重子、重仙、中白、下白などのツボを使いました。

3回目で見られていなければ滑らかに書けるようになってきて、4回目で腕全体に力を入れず指だけで書けるようになったということで、治療を終了しました。ご参考までに字のサンプルを載せておきます。

書痙03

 

 

 

 

 

やはり薬を飲まれている方の場合は、治療期間が伸びてしまうようです。

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